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2000年6月13日の日記でも宣言したが、今日はカモッラが起こしたある事件を詳しく書いてみたいと思う。カモッラが巻き起こす何億件の犯罪の中、私がニュースで見て、心底考え込んでしまった事件だ。
私がカモッラの存在を深く知ったのは、間接的に自分が被害に遭った時の事。もう6年ほど前の話になるが、主人の旅行代理店の開業当時、ライバル旅行関係者が若手カモッラを雇い、主人の店に嫌がらせで空き巣に入った。そして店内をメチャクチャにして去って行ったのだが、その事の成り行きにも驚いたが、私をもっと驚愕させたのは、別
の事実だった。
ランチ時で、店舗は閉まり、人通 りも少ない時間に彼等はやって来た。お店があるのは住宅街なので、車が通るのもまばら状態である。が、数人、目撃者はいたのだ。そしてその目撃者は、主人の家族の知り合いばかり。でも彼等は警察に「目撃した」と言う事はなかった。しかし後々になって主人に「実は私は見た…」と言って来たのだ。
私は「え?どうして?なんでそんな後になって言うの?」「どうして警察に言わないの?」と主人に聞いてみたが、「それは…彼等は恐いんだよ。自分が目撃したなどと警察に公言したら、自分の身の上に何が起こるか分からないから。カモッラがやって来て、今度は自分たちが被害に遭う事だってあるんだから。」と。
それでも私は「それって違う!! どんなに恐くたって、悪は悪じゃない。そうやって悪を見逃していたら、これからもドンドンカモッラは蔓延る一方でしょ? こういう小さな事、嫌がらせ空き巣の目撃すら公言出来ないなんて、逆にカモッラをのさばせる原因になるんじゃないの? 悪い事は悪い。ちゃんとそれを誰かが、どんな小さな事でもいいから、言わないとナポリは一生このままじゃないの?」とアツク語っていたが、主人は「そうなんだけど…アキ。仕方がないんだよ。僕には彼等の気持ちが分かる。」と。「『仕方がない』? そんな言い方なんてキライ!! そんな事言っていたら、何も変わりはしない!!」と私はどこまでもアツかったのだが、ある事件以後、私は、当時言った事の全てを自分の心の中で削除する事になった。
その『ある事件』とは、幼女ビデオ事件である。つまりカモッラが、ロリコンもロリコン、小学生の女児を裸にさせイタズラしてる所をビデオ撮影。それをマニアに売っていたと。そして問題は、その女子小学生を集める所にある。
イタリア全土に悪の名を轟かせるカモッラは、決して馬鹿な事はしない。一般
市民の女児を誘拐して撮影などと、すぐに御用になるような事はしない。では、彼等はどうしていたかと言うと、ナポリ市外の貧しい町、しかも近年カモッラの勢力が異様に強くなっている海辺の町にターゲットを置き、前科者や極貧の家庭に的を絞り、そんな家庭の女児達を選んでいたのだ。そして恐るべき事に、その女児の親たちはそれを知っていたのだ。
家に行き、先ず親と話す。極貧の家庭には「金が欲しければ」、そして前科者の家庭には「大人しく生きて行きたいのなら」と前置きをしておいて「娘を貸せ」と。もちろん親はイヤに決まっているのだが、最後のカモッラの言葉は「さもなければオマエら一族、ぶっ殺す。」
そうしてカモッラは、小学校の下校時に『契約』した家族の娘達を迎えに行き、何時間か撮影。そして家に送り届ける。撮影以外は何も娘達に辛くあたる事はないが、もちろん当事者の娘達も恐くて反抗は出来ない。が、必ず数名の女児が、毎日見知らぬ
豪華な車で帰って行く姿を見て、他の学童達の噂になり、教諭達の耳にも届くように。そんな所へ、カモッラは担任女教諭達への『口止め』にも出た。脅し文句は一緒、「黙っていなければ、オマエもオマエの子供も家族達も親戚
達も、一族全てが『居なく』なるんだからな。」と。
そうして、この幼女ビデオは、女児達の親たちも教諭達も知りながら、撮影が続けられ、学童達が「どうして○○ちゃんは、急にあんなカッコイイ車で迎えに来られるようになったんだろ?」と話が出ると、女教諭達が「そんな事、気にしないでいいの。さ、勉強よ!」と話を逸らせさせたりしていたようだ。
そしてこの事件は、耐えきれなくなった一人の女児が、撮影中にどうにか逃げ出して警察に行き、そうして一気に明るみに出た。親たちや学校側への事情聴取が始まり、関連していたカモッラの全員が即逮捕され、一件落着…とは思いきや、やはり衝撃だったのは、親も先生も承知の事実であった事。
以後、ニュースで、近所の人達や、女児達の学友の話などがインタビューで何度かマスコミに上がった。でも誰も他の人達は事情を知らなかったのだから、どれも歯切れの悪い言葉ばかり。「そうだったのか」「いや、知りませんでした…」そして学童達は「なんか変って思っていたけど、先生が気にするな…って言っていたから。」
親たちはインタビューに出てくる事は一切なかったが、ただ学校側では、唯一、一人の女教諭が泣きながら答えていた。「イヤでしたよ。ええ、死にたいほどに! 私の教え子が、毎日そんな目に遭っているのを想像するだけでも。彼女の顔を見るのも辛かったですよ。どうにかしたいと何度も思いましたよ。でも。あんな事を言われてしまっては、私は何も出来なかった…。コレでは教師の資格もないですか? 教師失格? でも、あんな事を言われて、私に何が出来たと言うのでしょう。恐かったですよ。自分を守る為に教え子を犠牲に? なんとでも言ってくれて構いません。でも、アナタは(インタビューアに向かって)出来ましたか? アナタなら、言えたのですか? 教えてくださいよ。 私は本当にこの毎日、一体どうしていいのか、全く分からなかった。今、全てが明るみに出たと言っても、私の気持ちは変わりません。」
白熱の女教諭インタビューを聞いて、私は、なんとも言えない気分になった。彼女の言葉の全てを心に、自問自答してみた…「私ならどうしただろう?」と。そしてその答えは、未だに出せないでいる。『悪い事は悪い。ちゃんとそれを誰かが、どんな小さな事でもいいから、言わないとナポリは一生このままじゃないの?』と豪語していた私だが、実際にこの教諭と同じ立場になったと仮定して、私は自分の言葉通
りに行動出来ていただろうか?
「さもなければオマエら一族、ぶっ殺す。」「黙っていなければ、オマエもオマエの子供も家族達も親戚
達も、一族全てが『居なく』なるんだからな。」…単なる脅しではない。カモッラなら本当にやりそうな事だ。でも、もし私が教諭で教え子がそんな目に遭っていたら『絶対に許されない』と思うのだが…でも…本当にカモッラなら一族を木っ端微塵にしそうだし、恐い…でもやっぱり絶対に許されない…でも………と、行ったり来たりだ。この女教諭の気持ちが、本当に心から分かった。
そして主人の旅行代理店の空き巣目撃した人達を、ただ無責任に責める事もしなくなった。この場合は事件の規模が小さいとは言え、やはりカモッラはどこまでも恐いのだ。
恐いから、見て見ないフリ、聞いて聞かなかったフリでいいの?自分を守る為に?それでは何も変わらないじゃない?…という心の言葉はあるけれど、ナポリ在住10年にも満たない私には簡単に答を出せる事ではないし、ナポリ人達に気安く問いかける問題でもない。これからもずっとカモッラの事件はニュースや実地で聞いたり体験したりするのかもしれないけど、ただ単に『うわっつらの正義感』で考えるのではなく、ジックリと考えていきたいと思う。
って、私が考えても、カモッラ問題は何も変わらないけど、それでも私は『仕方ない』とは言いたくないから。何も変わらなくても、私自身の中で『答え』を見つけていきたいから、私はどこまでも真面
目にこの問題を現実の物としていつでも受け入れようと思っている。それが他人の身に起こった事でもなんでもね。14/06/00
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