私がナポリでのデザイン仕事を諦め、インターネットで他の街や国と仕事をしよう!と思ったのは、今から4年前の1996年春の事でした。イタリアでは、個人で始めている人が周りにはあまりいませんでしたが、話題にはなっていて、会社での利用は当たり前、プロバイダがめきめきと出来ていた頃でした。そして日本の友人達は、すでにインターネットを活用している人が多く、私にいろんなネットの利点を教えてくれました。
「アキさん、大丈夫、大丈夫!! インターネットならナポリに居て他の土地と仕事も出来るよ。チャレンジあるのみだよ!」と、インターネットの『いろは』を教えてくれたのは、パソコン業界に居た友人。私がその年の初夏に東京に行った時には、本当にいろんな事を教えてくれました。しかも「折角東京に居るんだから、売り込みも開始したら?」と言われ、「え?? でもまだ私、ネット始めてないのに、いきなり売り込みなんて…。」と私は躊躇しましたが「平気だよー。ナポリに帰ってすぐにプロバイダと契約すればいいだけの話じゃない! まだネットの実績はなくても、とにかく東京に居る間に、顔だけ出して『帰ってから即ネット始めますから、何かあったらよろしくお願いします』って、やるだけでも大切じゃない?」と言われました。
確かに彼女の意見はその通りでした。幾らネットで仕事…と言っても、一応顔を知っていて、話もした事のある相手なら、クライアントも仕事を発注しやすいかもしれない。だから彼女に同意し、彼女がフリーで仕事をしている雑誌社にお伺いし、2-3の雑誌編集部へお邪魔しに行く…という段取りを決めてもらいました。
でも一応『売り込み』です。「何をやりたいか」という目的を持って、お話をしないとなりません。今までやって来たデザインの仕事、全てがネットで出来るようではなさそうな気がして(一つの仕事データが100MBを越す物なども日常茶飯事ですから)、一体どの程度の事がネットで仕事出来る許容範囲なのか、考えてみました。そして、ずっと前からネットでの仕事をしている他の友人にも本当に具体的に色んな話を聞かせてもらいました。
話を聞いてみると、やっぱりネットでは大がかりな仕事は出来そうにもありませんでした。今現在では平気な事もありますが、4年前の状況では、まだまだ難しい事も多かったのです。どう考えても、大好きなパッケージデザイン、総合的CI、イベントのポスターなどは出来ない…。「なんでも出来るかも?」と思っていたネットだったけど、やはり上限はあり、不可能な事が多かったです。でも、自分で、地元ナポリでの仕事を蹴って、ネットでの仕事を望んだのですから、「なんだぁ〜、何でも出来る訳じゃないのねぇ〜。」なんて不平を言ってる場合ではありませんでした。仕事の範囲は狭まってしまっても、許容範囲の中、出来そうな事はたくさんある。それは何か?を一生懸命考えました。
会社やお店のCIじゃなくても、ロゴマークデザインだけなら楽々出来る。パッケージも小物ならOKだろう。広告も雑誌掲載用くらいなら出来るかな……などと色々浮かびましたが、軽いデータで仕事出来るという点で、真っ先に思いついたのが、小さなイラストや雑誌のカットなどです。そして私が思った事は……
「そうだ!これを機会にイラストレーターにもなろう!」という事でした(笑)。
それまでの私は、あくまでデザイナーで、イラストも描いてはいましたが、自分のデザイン物に描いたり、納期などの問題で適当なイラストレーターが見つからない時に描いていた程度の仕事しかしていなく、イラストのみで仕事を受けるなんて事はしていませんでした。
そんな私が、しかもデッサンすら出来ない私が、イラストレーターと名乗る事にかなり躊躇しました。おちゃらけ路線のイラストしか描けないのに、そんな肩書きを名乗っていいのだろうか? 素晴らしいお仕事をなさってるイラストレーターの方々に申し訳ないような、そんな感じを持ちました。
が、しかし! 背に腹はかえられません(笑)。生活もかかっているし、だいたいナポリ人だって、素材集切り貼りしてるだけで『デザイナー』というのだから、一応何十回も描いてそれが商品として残っている…というイラストの実績のある私が、イラストレーターと名乗ってもいいではないか!と急に開き直って(笑)、小さめのデザインやイラストも描きますという路線で売り込みに行こうと決めたのです。
そして前述の彼女と、雑誌社訪問に。その時は2誌の編集部にご挨拶させていただき、自作のマンガ付きプロフィールを持って「イタリアに住んでいて、これからネットも始めるので、何かあったらよろしくお願いします。」と頼んできました。そして後日、同じ雑誌社ですが、違う雑誌の副編集長の方からお電話をいただき「是非、ウチの編集部にも顔を出してください。」という事で、ナポリに帰国する数日前に、またその会社に行き、その副編集長と直にお話をしました。
その方は、私のプロフィールにあったイラストを気に入ってくださり、「是非、イラストお願いしたいと思うんですが、本当にネットでのやり取りで大丈夫なんでしょうか?」と、率直にお話くださいました。その方はもちろんインターネットをなさっていましたが、仕事のデータなどは、他のネット関連で、海外へインターネットでグラフィック関係の仕事発注などなさった事がなかったようでした。
「大丈夫なのでしょうか?」と、言われても私は、パソコン通信もインターネットすらもまだ未体験。全くのド素人だったのですが「ま、なんとかなるんではないでしょうか、きっと。ナポリに帰ったらすぐにプロバイダと契約して、ネット開通にしますから、その時にまたご連絡致します。」と、その時は本当に取りあえず顔見せという感じで帰ってきました。
そしてナポリに戻り、いろんなプロバイダを検討して、今の旦那の友人の友人がナポリ支部をやっていたcmtという所と契約。日本の友人達や、顔見せに行った編集部の方々にメールをじゃんじゃん書きました(笑)。メールを出す&もらうだけでも楽しい♪♪って感じでしたが(^.^;、先ずは、始めに顔見せした編集部の方から『イタリアのインターネット事情』のコラム依頼を受けました。
いきなり来たのが、デザインでもイラストでもなく、文章の仕事…だったのは驚愕! たった1000文字の原稿を書くのに一週間も悩んで書き上げました。そしてこちらの生活風景って事で、ポジターノに行った時の写真画像を送りましたが(笑)、掲載紙を送っていただいたのに、それはこちらに届かず、もう一度送り直していただいたのですが、それでも届かなかったのです(^.^;。と、いう訳で、私のネット初仕事は、自分でも見てないままに終わったのですが(笑)、コラムを書き上げた頃に、私のイラストに興味を持ってくださった副編集長さんからもメールが来て、正式にお仕事を依頼されました。
デザインはしなくて、イラスト一本の初仕事。しかもネットを介しての…。その初仕事は、あるゲーム誌(笑)の読者コーナーのキャラクター作りと、季節に合わせたカット数点。そして4コママンガ。月刊誌の連載仕事です!! 「ネットで仕事をするぞ!」と思っていた私に、友人の助けもあり、いきなり連載仕事がいただけて、しかもイラストレーターとして。大喜びで私は仕事を開始しました。
そして、先ずはキャラクターのイメージラフからメールに添付して送りましたが、副編集長&担当さんから「データが見れない…」という返事が。何回送っても同じ事で。「折角仕事貰えたのに、どーしたらいいの??」と、焦りました。しかもそれは7月下旬の事で、8月上旬には私はヴァカンスに。それまでにどうにかして、ラフから本番までいかないとならないのに、このままデータがちゃんと届かないのなら、私ってばヴァカンスキャンセル??って不安もありました(^.^;。いろんな友人に聞いても「分からない」だったし、「どうしよう?????」と、まだまだ訳のさっぱり分かってない、インターネットの世界の中で試行錯誤していました。25/07/00