デザイナー家業はやっぱり無理かいな?と感じ、再び事務職に舞い戻った私。ナポリの丘の町:ヴォーメロからナポリ中央駅まで、行きは徒歩(自宅の目の前からバスが出ていたがコレが毎朝遅れ、徒歩の方が早く着く:笑)、帰りは地下鉄とフニコラーレを使って通
っていました。月曜から土曜まで仕事で、平日は結構手一杯。でも日曜は友人達とお出かけしたり、お招きを受けたり、毎日楽しく過ぎていきました。が、私には足りない物が…。それは『アモーレ』でした(笑)。
こちらにやって来て、うさん臭い輩がたくさん声をかけ、まともそうな人だと後々一緒にピザでも食べに行く事はしましたが、やはり東洋人狙いの興味本位
。実は既婚者なのに、ウソをついて私を誘おうとしたり、独身でもピザ屋で迫って来たり、そりゃもうたいへん(笑)。観光事務所にも、私狙いで事務所にやって来るならず者のナポリ人も多かったのです。でもそんな時は、副社長が追い払ってくれました。副社長は、妹に対する兄の態度で、私からならず者達をガードしてくれました。誰かが私に話をしてくると、コワイ顔で副社長が近寄って来て、相手に下心でもあれば、逃げて帰っていきました(笑)。そしてその後に必ず「まったくよぉ、なんて奴らだい!! 頭ではヤル事しか考えてないんだぞ、きっと。アキ、本当に用心しろよ!! ここでは俺がいるけど、一人の時とか、絶対に知らない男と口を聞くんじゃないぞ!!」と。私は(ん〜、でも副社長だってカワイイ外国人観光客を見ると下心丸出しになるのでは?)と思いつつも(笑)、そんな彼のガードには感謝していました。
でも怖がっていただけでは、ダメ。私だっていろんな人と知り合いたいし、そして気が合えば恋人も欲しい。だからまともそうな人達とはピザを食べに行ったりしても、でも結局はすぐにそっちの話になったりして、本当にうんざり…。中には家族にすぐに紹介してくれ、楽しい友達付き合いを始め、そろそろ恋人…という関係になったら、途端に『本性』を出してきたり。出会う男性、なんだか全てがこんな調子で、私は一時ノイローゼになりそうでした。「ああ。ミラノでは気の合う恋人がいたのに、どうして私はそんな彼から去って、こんなナポリに来てしまったんだろう? なんか『いい男を見つけるのには世界一難しい町』に来てしまったような気がするぅ〜〜!」
職場の社長や副社長には、本心を話していました。「私だって折角ナポリに来て、これからずっと住むつもりだから、ここで恋人が欲しいよ。でも出会う人、皆、なんか下心あるんだもん…。なんだか恋愛に幻滅してしまいそうだよ…。」と。副社長は「そうだよな、アキはここに一人だろ? 普通
のナポリ女性だったら、マンマや家族達が相手が真剣かどうか確かめるのに、アキは一人でここにいて、遊び人達には都合のいい女性になってしまうのかもしれないよ。だからこそ、より一層気を付けて欲しいし。俺達がチェックするから、付き合いたいと思う男がいれば、必ず紹介しろよ。それに俺達の友達も皆既婚者だから、誰か紹介って訳にはいかないし、それに何と言ってもアキは結構好みが厳しいからなぁ〜。アキの望む男なんてナポリには居ないかもしれないしよ〜。」と。
それに輪と冗談をかけて社長は「そうだよなー。だいたいアキは大食いで大酒のみだしよ。恋人って言っても結婚を前提にする訳だしな、そうしたらよぉ、アキを養うには、毎月牛2頭、パスタ500キロ、ワイン3樽必要だぜ。そんな金を毎月払える男が、このナポリのどこに居るよ???って俺は言いたいよ!!」と、とんでもない発言までしましたが(笑)、皆で(私も混じって)「そりゃ、その通
り!!」と大笑いしました。
でもそんな冗談を言った社長が「でもさ、アキ。本当に大丈夫だよ。冗談抜きで。ナポリには悪い男だけじゃないよ。アキが待っていれば絶対にいい男に巡り会える。これは保証してもいい。いい男もたくさんいるんだから。 それにさ、ウチの事務所、今度から外国人相手だけではなく、ナポリ人相手の旅行代理店業務も始めるだろ。そうすると、いろんなナポリ人がやって来る。その中でアキは、素晴らしい出会いがあるかもしれないよ。」と言いました。
そうは社長が言っても、旅行代理店業務を始めた事務所にやって来るのは、普通 のお客さん。及び、通勤途中の私をつけて、客のフリを装って、二言目には「どっか一緒に食事でも…」という人達ばかり。なんでそんなに誘いばっかするのじゃ??とノイローゼを通
り越して、イライラ感がつのるばかり。そんな中、ミラノでの彼氏が(私は彼に黙ってミラノから去ってしまった)なんとかして私の行き先を突き止め、ようやくナポリの私の電話番号を知り、「どうしたんだ!!なんで黙って消えたんだ!!ナポリなんかではろくな事ないだろう??今すぐにミラノに戻って来なよ!!」と電話をかけてきて、終いにはナポリまでやって来ましたが、でもそんな彼に私は「ゴメンなさい」と言うばかり。「どうしてもナポリが好きだから、ミラノには帰れない。」と。
そんな彼が電車でミラノへと帰る時に見送りをしながら、本当にちょっとだけ「ミラノに戻りたいかも…」と、思ったのは事実でした。でも、去っていくミラノ行きの電車から背を向けると、そこにはナポリ。アモーレがなくても、私はこの町で生活している事だけで幸せを感じていたので、「いいんだもん! 私はここで本当に幸せだもん♪ ちょっぴり悲しい事もあるけど、やっぱり私は一番ナポリが好きだし、これからはナポリを私のアモーレって思って生活しよ!! 『恋人?それはナポリよ!』って言えるようにね」と思い、毎日、声をかけてくるならず者にも気にならなくなり、事務所にやって来て誘いをするだけのナポリ男達に「またかよ〜。ったくぅ〜。しょーがねーなー!!」と、テキトーにあしらう術を身につけていきました。
そして事務所は、観光や旅行代理店業務のみならず、なんとコンサートやサッカーのチケットを売る業務も始めました。ナポリで行われるコンサートや試合だけの業務なので、仕事量
はさして変わらなく、でもなんだか楽しかったです。店頭に張るポスター作成(私担当:笑)も、観光や旅行の事だけではなく、コンサートのお知らせとかもあるし…。そして『ナポリ(サッカーチーム)のチケット、ここで売ってますよ★』と、手書きのポスターを店頭に貼って、そして、その翌日、ある男性が「ここでチケット売ってるんですか?」と事務所に入って来たのでした。02/06/00